懐石小室の天然鼈

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「そうだ、僕はすっぽんが好きだった」と、この商品を見た時に思い出した。

この仕事を始めて16年が過ぎたが、段々とおいしいものに関する感覚が変わってきて、
おいしいものを食べたいから、「食べた事がないものを食べたい」になっている気がする。正確にいうと比重が変わってきた。
何を食べるかではなく誰と食べるかだとか、人は目でも味を感じるだとか、何かの本で読んだような事を感じたりもする。

横で、何でもおいしそうに食べる若手が本当に羨ましい。
普通に「おいしそう!食べたい!」って言いたい。健康診断を気にせず〆のラーメンを食べたい。クジラを食べて「おいしい牛肉ですね」言ってのけるメンタルが欲しい。

そんな私が、久しぶりに食べたい!と思ったのがこの懐石小室の天然鼈でした。

鼈はうまい。
日本三大美食を僕がつけるなら、鼈、ズワイガニ、河豚だなと思ってます。その中でも鼈はミステリアスで、食べると寿命が延びたような気になる数少ない食材です。

通常の鼈は養殖がほとんどです。
産地は日本に何か所かあり、1~2年、場合によっては3年育てたものが料理屋で出されています。豊洲市場の中でも鼈を扱う仲卸は何件かあり和食料理屋に卸されてる様子です。
余談ですが、今ではかなり少数だと思うけれど、浅草等下町にいくと泥鰌・河豚・鼈などが同時に並んでる不思議な居酒屋があって、そういう店では「とりあえずビールと、今日は鼈にしようか!」という注文があるのだろうか?

鼈がそもそも珍しい食べ物の部類だろうが天然物はさらに希少、幻と言っても良いです。
懐石小室ではこれを4時間かけて煮込む。鼈はとにかくスープがうまい。臭みなどなく、強烈なうまみのスープ。永遠に飲んでいたい。身もおいしい。4時間も煮込んでいる身なのにまだ濃い味がする。プルプルとしたエンペラも最高。

そして、焼餅と焼き葱がまた良い味を出している。

鼈と餅がここまで合うとは思わなかった。雑炊もおいしいが餅の方が格が上というか鼈という神々しい食材と釣り合う気がする。葱も焼いているので香ばしくて甘みも出てて良い。

とは言っても最後は雑炊で締める。
普段は糖質を気にする私ですが、鼈のエキスを吸いつくした雑炊に限ってはお腹がはち切れるまで食べて良い事にする。ここで、いつも悩むのが卵をいれるか、いれないか。

結論からいうと入れない方がおいしい。卵をいれると全体がまろやかになってしまって、鼈の鼈たる味が損なわれてしまうなーと思う。思うけれど、やっぱり半分食べたところで入れてしまった。卵の魔力は怖い。これはこれでうまい。

懐石小室の鼈は、人生の中で1度は食べておいた方が良いと思います。食べた後に全身にエキスが行き渡ったような不思議な感覚になる、舌だけでなく全身が喜ぶ味です。

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