食文化で色々やっている井上です!
関東の人間である私にとって、
かつて、鱧という食材はそれほど惹かれるというものではなく、
また、松茸も大金を払ってまで食べたいものではありませんでした。
その考えが劇的に変わった料理が、この「鱧と松茸のしゃぶしゃぶ」です。
食材の組み合わせで、ここまで美味しくなるものか。
究極の「出会いもん」と言われるのは、伊達ではありません。
「美味しいのは解る。だが自宅でその美味しさを再現できるか?」
そのお気持ちよく分かります。
そういう方がきっと多いだろうなと思いましして、
丁寧過ぎるほどの説明をさせて頂きたいと思います。
一部、重要な写真が無いのは、
味に酔いしれて撮るのを忘れてしまったからです。ごめんなさい。
さて、まず何よりも重要なのは、
「鱧も松茸も信頼できるお店で」
という1点です。これを忘れないで下さい。
特に、鱧のように「ヌルヌル」した魚は、運が悪いとけっこう臭い事があります。
においがする鱧を出汁に入れると、そのにおいが全部の食材に行きわたってしまって、
それはそれは悲劇です。
今回は黒門丸一さんから、淡路島の骨切りした鱧を取り寄せました。
ここのは本当に旨い。
切られる直前まで活きていた鱧を、更に神経抜きもしています。
ここまで鮮度にこだわった鱧は当然臭みなどなく、湯引きしたものを塩で食べても美味。
骨も手切りにしているので(一般には機械切りも多い)、口当たりも大変良いです。
前置き(宣伝?)が長くなりましたが、いざ作り方です!
「いいや、どこぞの料理人は違う作り方だった!」と言われても知りませんからね(笑)
まず、松茸の処理からです。今回は岩手のものを手に入れました。
松茸は石づきの部分を鉛筆を削るようにそぎ落とし、
全体をキッチンペーパーなどで拭きます。
そんなに神経質になることはなく、泥が無ければいいや程度にやれば良いです。
とても簡単です。
処理をしたら1本づつキッチンペーパーで丁寧に包み、冷蔵庫に入れておきます。
すぐに食べるなら、包むのは不要です。
鱧は特に下処理は必要ないので、食べる直前に届くようにしました。
スダチを買い忘れてたので、入っていてホッとしました。
やはりこれが無いと。
さて、届いたらいよいよ出汁をとります。
これも、とても簡単です。
添付の出汁(ボトルのもの)があるので、それを鍋に入れ、
そこに鱧の頭と骨を放り込み、さらに出汁を濃くします。
頭も綺麗に処理をされているので、湯引きなどしなくて大丈夫です。ただ放り込む。
この頭、後で奪い合いになるくらい旨いので絶対に捨てないで下さい。
そこに松茸をドカッと入れます。
この時に素晴らしい香りが、湯気と一緒に立ち上ります!幸せの瞬間です。
「香り松茸・・・」と言いますが、松茸は旨みもすごいです。
「・・・味しめじ」と繋げるのが普通でしょうが、「味も松茸だろ」というのが私の感想です。
松茸を最初に入れて、松茸エキスを抽出し出汁を更に更にパワーアップさせます。
これで、準備は完了です。
ここまで来るとこの出汁はもう「宝」ですね。
細かな鱧の脂が表面に浮きキラキラして美しい。
ここでやっと鱧を箸で持ち、
いざしゃぶしゃぶします。好みでしょうが10秒位。
※ちなみに、鱧は喧嘩にならないように一人づつ小皿に取り分けておくと良いです。
そうすると、自分のペースでしゃぶしゃぶできますので、安心してじっくり味わう事ができます。
ペースの速い人が一人いるだけで、ついつい焦ってしまいますから(笑)
鱧は骨切りをする事でヒダヒダが作られてます。
このヒダヒダがある事で鱧の総面積が広がり、
そこに凝縮された出汁がたっぷりと纏います。
その出汁に包まれたプリプリプルプルの鱧が、松茸と共に口の中にやってきます!
旨い!!!
あまりの美味しさにボーーっとします。
そこに、宮城の純米大吟醸酒をグビッと飲むと、「生きててよかったぁ」となります!
ちょっと学術的に事を言うと、
鰹節と昆布の出汁は、それぞれ旨み成分の相乗効果で旨みが
100倍になるという話は聞いたことがあろうかと思いますが、
鱧と松茸も基本は同じで、イノシン酸とグアニル酸の相乗効果です。
更に日本酒には「コハク酸」と言う、うまみ成分が含まれます。
このコハク酸は貝などにも豊富で、実は非常に強いうまみを持っています。
お気づきでしょうか?
添付のの出汁に含まれるイノシン酸×グルタミン酸に、イノシン酸×グアニル酸の旨みが加わり、
更に、コハク酸まで食わるので、
「イノシン酸×グルタミン酸×グアニル酸×コハク酸!」という凄い世界が、
口の中で繰り広げられているのです!
さて、この凄い出汁は煮詰まって、ちょっと薄めたいなというタイミングがやってきます。
そこに水を入れるのを我慢して、
水切りした豆腐を8等分位の薄切りにして入れます!この日は、三ノ助の絹ごし。
見て下さい。
濃密なソースのようになった出汁を、豆腐が吸いまくります。
これをチビチビ食べつつ日本酒を飲む。
これも、気絶するほどの旨さです!
鍋も終盤。いよいよ〆の時間です。
出汁はこれでもかと言う位濃くなっていいるので3倍くらいに薄めて、
そこに昆布を入れて火をかけずしばし待ちます。
ここまで来るともうやけくそで、上等の羅臼昆布を使いました。
20分位に立ったら火をかけ、沸騰する寸前に昆布を上げ、
そこにうどんを入れて水分がある程度無くなるまで煮込みます。
うどんが十分に出汁を吸ったら、小鉢に取り上げスダチを絞って完成です!
ここからは子供も参戦。凄い勢いでうどんも無くなります。
毎回思いますが、鍋は〆が一番人気な気がします。
ちなみに、子供が万が一にも「鱧と松茸」の方を食べたいと言わない様に、
大好きな唐揚げをたっぷり作っておきました。作戦成功。
出汁も含めて、何も残りません。
すべてを食べつくしてしまう「鱧と松茸のしゃぶしゃぶ」是非お試しください。
鱧の処理が完璧なので、誰でも簡単に楽しむ事ができます。
松茸が無い場合は無理にキノコを入れずに、鱧だけを堪能すると良いと思います。
いやでも、大黒シメジとかは合うかもな。どうだろう。
この時は連休!第2夜に続きます!
・黒門丸一の鱧は→こちら