本物の一級品わかめを求めるならこちらで!
【石浜漁港】佐藤登志夫さんと【港浜漁港】阿部力さんの一等わかめ
刈り取り、水揚げ、めかぶのカットまで終わると、ようやくボイル作業に入ります。
因みに日の出前からこの段階に入るまで、状況にもよりますが6時間近くもの時間を要しています。
ここからはいよいよ本格的に加工作業です。
作業工程としては、
ボイル→冷却→塩蔵→選別(芯抜き)→脱水
という順です。
各項目、個人個人で細かなこだわりや気配りがありますが、大まかな流れは同じです。
まず、ボイルは長方形の大釜で行います。
お湯にくぐらすと鮮やかな緑色に変わりますが、ここはジッと我慢です。
茎に色が通るまで待ちます。
佐藤会長の場合、色の変化の差が出る事を嫌い、通常の人より細かく茹でを行っています。
状態を見極めると、カゴを上げて冷却槽に移動です。
冷却槽ではポンプで引き上げた海水が循環しており、中で泳がせながら充分に冷やします。
ここで冷却が甘いと色が変色してしまったり、塩の絡みが悪くなってしまいます。
冷却槽から引き揚げた後は塩絡めです。
塩絡めは、回転するドラム型の機械(その名も「塩絡め機」・・・まんまですが、漁師さん達は皆、かっこよく「ミキサー」と呼んだりしています。)にわかめと塩を入れて絡めます。
淡々と作業をしているように見えて、塩分比率や、まんべんなく塩が絡まっているか状態を確認しています。
ボイルや塩絡めなど、重要な項目では佐藤会長自ら、阿部さんの場合は阿部さんと息子さんだけが行っています。
ここまで終わると、タンクで漬けて一昼夜寝かせます。
阿部さんの場合は、塩がまんべんなく行き渡るように、タンクにポンプを付けて塩水を循環させています。
佐藤会長の場合は、タンク内で歩き回ったり、カゴを乗せて圧力をかけます。
うどんの生地と一緒で、そうした方が柔らかいのにコシのある良いわかめができるそうです。
また、漬け時間は重要で、早く引き上げたりすると塩の入りが悪く、脱水しても水が切れず水分が多くなってしまったり、日持ちが悪くなったりします。
こうしたわかめはもちろん等級が下がります。
翌日、タンクから引き揚げたわかめはカゴに移し、重りを乗せるなどして一度脱水します。
ある程度水が切れたら、阿部さんの場合は選別に入ります。
葉の大きさごとに分けたり、先端の変色しそうな部分をカットしたり、異物混入が無いかもここでチェックします。
佐藤会長の場合は芯抜きです。
この作業は、1本1本手作業で芯を抜かなければならないので、漁師にとって最も手間と時間の掛かる作業です。
しかも、下手な人間がやると時間が掛かるうえ、芯が残ってしまったり千切れてしまったりして等級を落とす事にもなりかねません。
実際私も手伝いましたが、千切れないよう慎重にやると、私が1本抜く間に周りの人は3~4本抜いています。全く戦力になりませんでした・・・。
しかしこの作業、ぎこちないまでも早く綺麗に取ったという達成感、俺ってもしかしたら才能あるんじゃないかという勘違いから、次第に快感へと変わっていきます。
因みに佐藤会長の場合、弟さんと比べても倍近い速度で芯を抜いていきます。
しかも絶妙な手捌きで、芯を殆ど残しません。
佐藤会長曰く、本当は若干芯が残っていた方が歯応えがあって好き。
でも綺麗に取らないと等級を落とされてしまう。という矛盾も感じているようです。
これは阿部さんも同意見で、柔らかい茎であれば付いていた方が好きという意見でした。
ただこれは個々人、好みがありますので、芯付きを食べてみたい方は是非阿部さんのわかめをご賞味下さい!
芯の柔らかいサイズを選別してお送りしています。
【阿部力の極上塩蔵わかめ 約500g ※外付細一等級に準ずる】
選別、芯抜きを終えるとようやく最後の脱水です。
これはプレス機を使い本格的に水分を抜きます。
6トンから7トン程の圧力でプレスすると、わかめが
「パチッ!パチッ!」
と、音を立て、横の穴から塩分が泡状になって一斉に噴き出してきます。
この状態で数十分置いておくと、取りだす時には板状になっています。
芯付きは手でほぐしても問題無いのですが、芯抜きの場合は千切れてしまいますので、塩絡め機に似た機械で回転させながらほぐします。
機械の名前は「わかめほぐし機」だそうです。
もう少し気の利いたネーミングはないのでしょうか・・・
ここまで、刈り取りから長々と書き連ねて参りましたが、脱水、ほぐしまで終えて、ようやく市場に出荷できるわかめになります。
簡単に説明してもこれだけの手間と労力で、これを連日繰り返しますので実際には相当な激務です。
朝3時から沖に出て午前中一杯は塩漬けまで、午後は前日のわかめの選別や芯抜き、脱水など、私の場合は1日で寝不足と肉体疲労で倒れそうになります。
浜辺の作業は、海やプールを泳いだ後の倦怠感にも似た疲労です。
疲れたと口にしながらも、これを半ば笑い飛ばしながら淡々とこなす所は、やはり海の仕事のプロは凄いです。